有報の読解方法まとめ

この記事では、企業の決算書(その中でも、有価証券報告)の読み方を解説していきたいと思います。

本記事は、「決算書の読み方」と「有価証券報告書の読み方と、絶対に見ておくべき5つのポイント」と「有価証券報告書とは何かをわかりやすく解説!提出義務がある記載要綱とは」を参考にしながら、まとめています。個人の見解も含まれており、下記内容を元にして、投資活動や事業活動などが成功することを保証するものではないことはご留意ください。また、本記事は、筆者の個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係なものになります。

資料の種類

有価証券報告書(有報)とは?

  • 1年間の決算書を含む企業情報。
  • 上場会社は年に1回だけ会社の1年間の経営状況を公表する義務を負う。
  • 監査法人による監査対象となるため、末尾に監査報告書が添付される。

四半期報告書(四報)とは?

  • 3ヶ月間の決算書を含む企業情報。

決算短信とは?

  • 年度末および四半期ごとに証券取引所に提出する決算書。
  • 有報に比べて、情報量は少ない。
  • 有報や四報よりも速く公表されるため、速報性が高い。
  • 監査法人による監査対象とはならない。

決算説明資料とは?

  • 企業が独自で作成した決算に関する説明資料。
  • 法令上の開示義務はない。

アニュアルレポートとは?

  • 経営理念などを理解するための報告書。
  • 会社を理解する上で読みやすい形にまとめられている。
  • 法令上の開示義務はない。

統合報告書とは?

  • 財務情報に加えて、企業統治(コーポレートガバナンス)や社会的責任(CSR)や知的財産なども統合した書類。

ファクトブックとは?

  • 数的根拠をもとにして、業績や歴史をまとめた書類。

有報の目次

  • 第一部:企業情報
    • (1) 企業の概況:経営指標等の整理、沿革(歴史)、事業内容などの企業概要情報。
    • (2) 事業の状況:経営方針、財政状況、キャッシュ・フロー情報などの分析情報。
    • (3) 設備の状況:設備の状況と前年度と比較した時の変化に関する情報。
    • (4) 提出会社の状況:株式や配当に関する情報。
    • (5) 経理の状況:決算情報。
    • (6) 提出会社の株式事務の概要:株式に関する事務的な情報。
    • (7) 提出会社の参考情報:親会社や提出書類に関する情報。
  • 第二部:提出会社の保証会社などの情報

有報の目的別チェックポイント

(1) ファクトの数字を読み解く

(1-1) 主要な経営指標の推移

・確認場所:(1) 企業の概況 - 主要な経営指標等の推移

・チェックポイント

  • 売上の規模は?伸び率は?
  • 収益の規模は?伸び率は?
  • キャッシュフローのバランスは?

・説明

  • 企業としての成績を知る。
  • どれだけキャッシュを持っているかで危険性を判断する。

(1-2) 企業の沿革(歴史)

・確認場所:(1) 企業の概況 - 沿革

・チェックポイント

  • いつ設立されか?
  • どんな事業をいつ始めたか?
  • どんな会社をいつ買収してきたのか?

・説明

  • 設立から50年以上経っているのか、設立から5年しか経っていないのかによって、成長率の期待値は異なる。
  • どんなノウハウやコネクションが社内にあるかがわかる。

(1-3) 事業内容

・確認場所:(1) 企業の概況 - 事業の内容

・チェックポイント

  • どんな事業を展開しているのか?
  • どのように展開しているのか?
  • 事業間のシナジーがあるのか?

・説明

  • これからどういう事業を主軸に進める予定かが推測できる。
  • 企業として、事業間のシナジーによる付加価値を推量できる。

(1-4) 社内人材

・確認場所:(1) 企業の概況 - 従業員の状況(4) 提出会社の状況 - 株式等の状況(4) 提出会社の状況 - 役員の状況

・チェックポイント

  • 従業員の数は増えているのか?減っているのか?
  • 誰が大株主なのか?
  • 役員の年齢層はどのくらいなのか?

・説明

  • 人という切り口から、企業の規模感を知る。
  • 議決権のバランスを知る。

(2) ファクトの理由を読み解く

(2-1) 企業としての解釈

・確認場所:(2) 事業の状況 - 経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析

・チェックポイント

  • 何故、経営指標の数字が変動したか?

・説明

  • 経営指標が改善(もしくは悪化)した原因に関する、企業視点の分析結果を知る。

(3) 企業の展望を読み解く

(3-1) 経営指針

・確認場所:(2) 事業の状況 - 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

・チェックポイント

  • 現在、どのような経営方針を掲げているか?
  • どのようなことを課題として捉えているか?

・説明

  • 企業として、どのような課題に対して、どのようにアプローチしようとしているかを知る。

(3-2) 設備の新設と除去

・確認場所:(3) 設備の状況 - 設備の新設、除去等の計画

・チェックポイント

  • どのような設備を新設予定か?
  • どのような設備を除去予定か?
  • 全体として、設備規模は拡大傾向か?縮小傾向か?

・説明

  • 設備の増設を予定している場合、売上規模を拡大させようとしている可能性が示唆される。
  • 設備の新設を予定している場合、新規事業への投資準備をしている可能性が示唆される。
  • 設備の売却(除去)を予定している場合、経営状況が悪化しているため、キャッシュを増やそうとしている可能性と新規事業への投資準備をしている可能性が示唆される。

(4) 企業の危険性を読み解く

・確認場所:(1) 企業の概況 - 主要な経営指標等の推移(2) 事業の状況 - 経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析(5) 経理の状況

・チェックポイント

  • 売上・営業利益が大きく減少しているか?
  • 短期有利子負債が現預金残高と比較して、大きいか?
  • 営業利益と営業キャッシュフローの間の大きな乖離がないか?
  • 多額の減損損失を計上していないか?

・説明

  • 危険信号はキャッシュが尽きそうな状態。
  • 特に、短期有利子負債が大きいのに、現預金残高(もしくは流動性資産)が圧倒的に不足している場合は、危険性が高い。

(5) 企業の特性を競合比較から読み解く

・確認場所:(1) 企業の概況 - 主要な経営指標等の推移(5) 経理の状況

・チェックポイント

  • 投下資本利益率はどれくらいか?
  • 利益率は?
  • 投下資本回転率は?

・説明

  • 投下資本利益率(Return of Invested Capital; ROIC)とは、投下したお金からどれだけ効率的に利益を出すことができたかを表す指標です。
  • 「投下資本利益率」を「投下資本回転率」と「利益率」に分解し、競合比較することで、競合他者と比較した時に会社の強みと弱みがわかる。同じROICだとしても、「投下資本回転率」と「利益率」のバランスは異なります。
  • このような分析を収益性分析と言います。

決算書を読むときの注意点

(1) 決算説明資料(企業としての解釈)には、バイアスが乗っている可能性があるため、ファクトから判断することを中心とする。

(2) Profits / Lossだけでなく、Cashという視点もしっかりと取り入れる。黒字倒産のリスクもしっかりと視野に入れる。

最後に

いかがだったでしょうか?

財務分析はこれから先も非常に重要なスキルになると予想されます。そのため、有報を読み込み、そこからインサイトが得られる人材はこれからも重宝されることでしょう。

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参考文献